ブログをお引越しする前の記事ですから、数字のデータは2018年2月です。
コメントを頂いたので表の数値を修正しました。ご指摘ありがとうございます。(2018/11/25)
さて、武田薬品工業のシャイアー買収が話題ですね!
製薬会社って買ったことありますか?
多いのは、武田薬品やエーザイは配当がいいから買う。
↑この理由はしょっちゅう聞きますが、
各製薬会社がどんな薬のラインナップを持っていて、特許がいつまで有効だから売上が維持できて。将来期待できる新薬の候補がいくつあって、新薬の臨床試験がどの団塊まで進んでいるからこの製薬会社を買っているんだ!!
そんな人、営業マン、ほとんど聞いたことありません。
さて、製薬会社にとって一番大事なことはドル箱の薬があるかどうか、、じゃないです?
特許があって、安く作った薬をべらぼうに高く売る!ここがミソですね。
さて!先週のニュースで、銘柄コード4507塩野義製薬のインフルエンザの新薬が厚生労働省から承認されたってのがありました
さて、このお薬。インフルエンザ治療薬S-033188バロキサビル(日本製品名ゾフルーザ)
これは、、、売れると思う!
インフルエンザ治療薬といえば、ロシュ・中外製薬連合のタミフルが有名ですね。
ただ、多くのデメリットがあります。
それは、感染後72時間以内に投与しないと意味がないこと。
5日間連続して投与する必要があること。
幼児の異常行動が認められること。。。
また耐性菌も出てきているんですよね。
リレンザも同じ効能ですが、吸入薬の為、高齢者や、幼児には処方しにくいんです。
新薬のゾフルーザは、たったの1回飲めば効果がある薬ですから極めてラクチン!
塩野義製薬は世界での売り上げが10億ドルになると予想しています。
10億ドル=1100億程度なのですが、この売上・はたして塩野義にとってどれくらいインパクトがあるでしょうか?!
2018/3月期の塩野義の売上会社予想が3450億、営業利益は1135億です。
って、、、半端じゃない売上高営業利益率。。
もうけすぎです。
ここに、売り上げが1100億オンされ、かつ新薬ですから相当量の利益率なはず。
薬九層倍ってきいたことありますよね。
となれば、今の予想EPS317円からPER19倍は安すぎるのは間違いないでしょう。
小野薬品のオブジーボの時、何倍まで買われてたのかw
まず、国内の製薬会社の売上・営業利益・売上高営業利益率・時価総額・予想PERをまとめました。
実績ベースです。多少の誤差はご容赦ください。
↑修正前
↑コメント頂いたので修正しました。(2018/11/25)
確かにこの表だと、中外製薬の売上高営業利益率がおかしいですね。。
こうやってみると、意外に各社の利益率にかなりの違いがありますね!
売上高トップの武田薬品工業は、売上高営業利益率が9%しかありません。
これは、ドル箱のブロックバスター(一つの薬で1000億以上売り上げる薬)のアクトスの特許が切れてそのあとに稼ぎ頭のお薬が出てないからってのが一般的な解説ですよね
売上高2位のアステラス製薬は、武田薬品より売上高は4000億以上少ないのに、営業利益は400億以上多いです。
この表から目に付くことは、売上高営業利益率が高い田辺三菱製薬と、塩野義製薬の評価です。
塩野義は製薬業界トップの売上高営業利益率31.92%ですから時価総額18000億まで買われるのもわかりますよね。
抗HIV治療薬のドルテグラビルの高い利益率からも、特許を持った製薬会社がいかに利益が高くでるのかよくわかりますね。
では、田辺三菱製薬の時価総額が12000億と低いのはなぜかでしょうか
また、中学製薬は5341億の売上かつ、営業利益が939億しかないのですが、時価総額29215億の評価がついています。
もし、仮に塩野義製薬の売上が今後、中外製薬並みの5000億、かつ、売上高営業利益率32%で1600億の営業利益があれば
中外製薬並みの時価総額、つまり、時価総額から、アップサイド要因が60%、株価8800円の道筋が見えるのではないかという仮説です。
さて、塩野義のインフルエンザ治療薬の期待感や、同業他社の比較をしてみましたが。
今の塩野義製薬の現状はどうなのでしょうか。
今、足元、塩野義製薬は過去最高益を更新中なのですが、一体何が儲かっているのでしょうか。
塩野義製薬といって、皆さまが思い浮かべるのは。。。
痛くなったらすぐセデス♪ やポポンS
ではないでしょうか。1950年発売のセデスや、53年発売ののポポンSは日本人に広く受け入れられた薬です。
ただ、塩野義製薬は一般薬のメーカーではありません。
今期の売上予想は3400億のうち、セデスやポポンSなどの一般薬の売上予想は70億円のみです。
塩野義は医療用医薬品メーカーなのですが、よく知られているのは
抗生物質の「フロモックス」
これはどの病院でもよく出てくるセフェム系の抗生物質ですね。
風邪ひいたら必ずといっていいほど出てくる苦いお薬
「PL配合顆粒」
ただ、お薬には残念ながら特許があります。
特許を申請してから、基本20年間、治験と承認までに要した期間によって延長が5年間あります。
と、いうことは、薬の成分を見つける→臨床試験(治験)→承認までの期間が10年であれば、特許が有効な期間は最長15年ですから。高い薬価でその薬を販売して設けることが出来る期間は限られれていると言わざるをえません。
さきほどのフロモックスは2008年に特許が切れているため、現在は後発医薬品(ジェネリック)が普及しています。
例えば、フロモックス100mgの薬価は1錠50円ですが、ジェネリック製剤のセフカペンピボキシル塩酸塩錠100mg31.1円となっているため、特許が切れた薬剤は、ジェネリック医薬品の登場に合わせて薬価を下げていかざるを得なくなります。
となると、製薬会社は常に新しい薬を開発して、特許が有効な期間に沢山販売して稼がないとならないわけですよね。
さて、一つの薬で1000億円以上の売り上げを上げる薬品を、ブロックバスターといいます。
有名どころでは
武田薬品の糖尿病治療薬の「アクトス」
エーザイのアルツハイマー治療薬「アリセプト」
あたりが株式投資の世界でも有名どころで聞いたことのある方ももいますよね。
さて、実は塩野義製薬もブロックバスター、開発してるんですよね!
国内の製薬会社の売上ランキング10位で今期の売上が3400億の会社に1000億単位での売り上げが期待できる薬品が出来たら、、、すごいインパクトですね。
実は、今まで塩野義製薬の屋台骨を支えてきた薬はさっき紹介した抗生物質の「フロモックス」ではなくて
高脂血症薬のクレストールってお薬です。
ただ、、残念なことに、この薬も特許が切れちゃってるんですよ。。
特許が切れると会社に入ってくる収益が劇的に減る・・・
塩野義製薬の手代木功社長はそれをよく理解していた。。
クレストールが承認されて社内が大盛り上がりの時に次の一手を考えていたんです。
それが今の塩野義製薬の収益の屋台骨を支えている。。。
抗HIV薬の「ドルテグラビル」なんです!
これは、抗HIV治療薬、つまりAIDSのお薬です。
一般的には、エイズって言った方がなじみがありますが、エイズとHIVは違います。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)がAIDS(後天性免疫不全症候群)を引き起こすんです。
HIVのウイルスが、人の免疫細胞を破壊していってしまうため、普通の状態の人なら絶対感染しないようなどこにでもいる日和見菌に感染してしまい、重症化して最終的には死に至ってしまう恐ろしい病気です。
HIVが厄介なのは、人の体にある免疫細胞(ヘルパーT細胞とか)に取り込み、自分のコピーをどんどん複製していくため、結果的に体の中にある、免疫細胞の数が現象していくことです。
エイズって聞くと死の病に聞こえますが、実は今はすぐに亡くなる病気ではありません。ちゃんとコントロールできるんです。
抗HIV治療薬は、HIVが免疫細胞にくっついてを取り込もうとする際に必要な酵素を遮断する薬です。
つまり、免疫細胞にくっついて取り込む前に、遮断してしまうので、体内のHIVの増加を抑えることができる→免疫細胞の数が減らない→免疫不全が起きない→長生きできる
ただ、実はエイズの発症を抑えることはできても、完治することはありません。
一生薬を飲み続けないとすぐにエイズウイルスが増殖してしまうのです。
体の中の免疫細胞にはいろんな種類があります。→ざっくりですが
ヘルパーT細胞→抗体を出すB細胞や病原体を攻撃するキラーT細胞に支持を出す司令塔
B細胞→抗体を出し、病原体の活動を抑える
キラーT細胞→病原体直接攻撃する
このほかに、メモリーT細胞という細胞があります。
これは、過去に退治した病原体の記憶をつかさどる細胞なんですが
→おたふくかぜに一度かかったらもう次にかからなくなるのはメモリーT細胞がいるからです。
実は、このメモリーT細胞、きわめて寿命が長いんです、その期間、約75年。
この期間、ヘルパーT細胞に取り込んでウイルスの増殖を防ぐことができても、メモリーT細胞に潜伏したウイルスが薬をやめた途端にどんどん増殖していくのです。
つまり、人の寿命が尽きない限り、エイズウイルスが身体に潜伏し続けてしまうわけですね。。
つまり、人の寿命が尽きない限り、エイズウイルスが身体に潜伏し続けてしまうわけですね。。
エイズが世界的に有名になったのは、1980年代からですが、1987年までは有効な治療法がありませんでした。
1987年にアジドチミジンという薬が開発されました。
これは、HIVが免疫細胞にくっついて取り込もうとする時に出てくる逆転写酵素を阻害して、取り込めなくする薬でした。
ただ、HIVは適応力が高く、すぐに耐性菌が出てくるため、単一の薬では限界が出たのです。
1995年にサキナビルという薬が発売され、米国でのエイズ死亡患者の数が5万人→1.8万人に減ったのですが、これは、プロテアーゼという酵素を阻害する仕組みです。
この異なる酵素を阻害する薬を同時に投与するHARRT療法を行うことによって、薬剤耐性菌が生じにく状況を長期間続けることが出来るようになったので、エイズ=すぐに亡くなるわけではない状況になりました。
今ある抗HIV治療薬は主なタイプで
NRTI(逆転写酵素阻害薬)
NNRTI(非逆転写酵素阻害薬)
PI(プロテアーゼ阻害薬)
INSTI(インテグラーゼ阻害薬)
CCR5阻害薬
があり、この中の数十種の薬の組み合わせを患者さんに合わせて投与していくのですが、、、
単剤の投与だとすぐに耐性菌が出てしまいHIVウイルスが増殖してしまう。
現在は三種類の薬を投与する方法が主流ですが、毎日複数飲む手間を考えて、複数の薬の成分を1つの錠剤にまとめた配合錠があります。
さて、、塩野義製薬の「ドルテグラビル(DTG)」
2013年8月に米国で承認、2014年4月に日本でも承認されています。
この薬は、INSTI(インテグラーゼ阻害薬)の部類に入るのですが、薬剤耐性菌が生じにくいというメリットがあります。
先ほどお話したように、抗HIV治療薬は一生飲み続けないとならない薬ですから、いつ薬剤耐性菌があらわれてもおかしくありません。塩野義製薬のドルテグラビルはこの薬の組み合わせの第一候補として選ばれるようになりました。
2014年末でHIV感染者の数は3690万人、抗HIV治療薬の市場規模は200億ドルと言われています。
塩野義製薬は、このドルテグラビルの販売権をイギリスのVIIV(ヴィーヴ)社に移管しています。そこから、販売金額の20%弱をロイヤリティーとして受領してます。
前回のエントリでクレストールの特許が切れるといいましたが、
クレストールのロイヤリティは
2013年657億→2014年474億→2015年476億→2016年330億
ドルテグラビルのロイヤリティーは
2013年なし→2014年58億→2015年405億→2016年733億と
クレストール発売後最大の売り上げをもたらした2013年の657億をすでに超えています。
そして、先日2018年第3四半期(2017年4月~12月)の決算によると、、、
クレストール170億、ドルテグラビル740億と9か月で前年度を超えています。
また、昨年11月からドルテグラビルと、NNRTIのリルピビリンを組み合わせたJuluca配合錠がFDAに承認されております。
コメント
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営業利益率出している表の数値めちゃくちゃですね。
そもそもの数値も決算資料と違うし、表の数値通り計算したとしてもおかしい。
例えばこの表の数値使ったとしても中外の営業利益率は17.6 %になるし、実際はもう少し高い。
そうなると、中外の時価総額をもとにした塩野義の株価予想も全然変わってくる。
こんな雑なデータと計算で分析したつもりになっているのが痛々しい・・・。
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